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乳がんについて

胸にしこりがある乳がん…?

しこりとは“かたまり”という意味です。乳房を触ると、しこりを触れることがあります。しこりというだけで、悪性のイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、しこりには良性のものと悪性のものがあります。良性のものは線維腺腫や乳腺症など、あとは正常の乳腺組織でも生理周期の影響で硬いときはしこりと感じることもあります。悪性のものだと乳がんがあります。
またしこりの感触はコロコロと動くもの、動かないもの、ざらつきがあるもの、ツルっとしているものなど様々で、触れるときの痛みの有無も異なります。

多様なしこりですが、触っただけでは良性か悪性かはわかりません。そのため、マンモグラフィや超音波検査などの画像検査を行い、必要に応じて細胞診や組織診などの病理検査によって確定診断を行います。

乳がんのしこり以外の
症状は?

手でしこりを感じる感覚よりも、マンモグラフィや超音波検査などの画像検査のほうが優れているので、乳がん検診を定期的に受診し乳がんを早期発見できたという例は多いのですが、乳房にできたしこりに自分で気づいて乳がんが発見されるケースもあります。これは乳房が、体の表面にあり直接触れることができるからです。
乳がんを疑う所見は、しこり以外に、えくぼのような皮膚のへこみ、皮膚の引きつれ、乳房の変形、乳頭のびらん(ただれ)、や乳頭からの分泌物があります。

乳がんの症状

  • 乳房にしこりがある
  • 乳房の皮膚にへこみや引きつれ乳房の変形
  • 乳頭に湿疹やびらん(ただれ)乳頭から分泌物が出る

乳がんの統計

日本では、乳がんの罹患者数は増加傾向にあり、女性の部位別がん罹患者数の第1位となっています。年齢別の発症数では30代後半から増加しはじめ40代と60代にピークがあります。乳がんは、40代と60代に発症のピークがあるとはいっても、統計を見ると全年齢で発症の可能性がある疾患です。若いから、もう歳だからと安心せず、ご自身の生命を守るためにも、定期的な乳がん検診を受けるようにしましょう。

女性ホルモンと乳がん

女性ホルモンのうち、エストロゲンが乳がんの発生に関わっていることが知られています。エストロゲンは、閉経するまでは卵巣で作られていますが、閉経後は脂肪細胞からエストロゲンを作られています。近年、食生活が高脂肪化しているため、エストロゲンの供給量が以前より増え、乳房の細胞はエストロゲンの影響を受ける期間が長くなっており、そのことが乳がんの罹患率が増加に繋がっていると考えられています。

近年はあらゆる世代でエストロゲンの影響が強くなり、乳がんの発症も多世代にわたるようになってきています。20歳を超えたら、乳房のしこりや形の変化などのセルフチェックを丁寧に行い、また地方自治体の実施する乳がん検診なども積極的に受けるようにすることをお勧めします。

乳腺にできる悪性腫瘍が乳がん

乳房は乳腺組織と脂肪組織が皮膚に包まれて存在する臓器です。乳腺組織では母乳がつくられますが、がんが発生する場所でもあります。乳腺組織は、母乳をつくる小葉、母乳を運ぶ乳管で構成されています。初期の乳がんは乳管や小葉に留まり浸潤・転移をおこさない非浸潤乳がんですが、進行すると乳管や小葉の外に浸潤し、場合によってはリンパ管・血管に入り転移を引き起こす可能性のある浸潤性乳がんとなります。

乳がんの早期発見のために

がん化した乳腺の組織は、増殖して「しこり」として触れるようになることがあります。乳がんは早期に発見できれば、比較的侵襲の少ない治療で完治させることができ、予後も良いことが知られています。そのためにもご自身の乳房の変化、特に初期症状としてしこりに気づくことは大切です。しこりに気づいても、受診をためらって放置してしまうと、そのしこりが乳がんだった場合、近接する組織に拡がり、そこからやがてはリンパ管や血管を通してリンパ節や他の臓器に転移してしまうことも考えられます。

乳がんは早期発見・早期治療で重要です

TNM分類とは、乳がんの病期について分類したもので、乳がんの病期について、浸潤の有無・乳房のしこりの⼤きさ(T)、乳腺の領域にあるリンパ節への転移の有無(N)、他臓器への転移の有無 (M)により規定されます。

非浸潤性乳がんは、がん細胞が乳管や小葉に留まっている状態の、超初期の乳がんです。ステージ分類としては0期にあたり、がんが発生した部位によって非浸潤性乳管がん、非浸潤性小葉がんに分類できます。この時期のがんはマンモグラフィによる乳がん検診などで見つかるケースがほとんどです。また、ステージⅠ期はしこりに触れるが2cm以下でリンパ節への転移が認められない場合をいいます。ステージⅠ期で発見され適切な治療を行った場合の10年生存率も95%程度と高率になります。そのため、この時期までの早期にがんを発見するセルフチェックや定期的な乳がん検診の重要度は高いものがあります。

乳がんの治療について

乳がんの病期分類(TNM分類)

他臓器への転移(M) 転移無し(M0) 転移有り(M1)
リンパ節への転移(N)
しこりの大きさ(T)
なし(N0) わきの下(しこりが動く)(N1) わきの下(しこりの癒着有)
or
鎖骨の横(N1)
わきの下と鎖骨の横
or
鎖骨の上下(N1)
非浸潤がん(Tis) 0 - - -
しこりが確認できない(T0) - ⅡA ⅢA ⅢC
最大直径が2cm以下(T1) ⅡA ⅢA ⅢC
最大直径が2cm~5cm(T2) ⅡA ⅡB ⅢA ⅢC
最大直径5cm超(T3) ⅡB ⅢA ⅢA ⅢC
大きさは問わない(T4) ⅢB ⅢB ⅢB ⅢC

乳がんの病期としこりの大きさや転移状況

病期 しこりの大きさや転移の状況
0期またはTis 非浸潤性乳がん、非浸潤性乳管がん、非浸潤性小葉がん
Ⅰ期 しこりが2cm以下の大きさで、リンパ節への転移無し。
ⅡA期 しこりが2cmから5cm以下の大きさで、リンパ節への転移無し。
しこりが2cm以下の大きさで、同じ側の腋窩リンパ節(わきの下)に転移有り。
ⅡB期 しこりが5cmの大きさを超え、リンパ節への転移無し。
しこりが2cmから5cm以下の大きさで、同じ側の腋窩リンパ節(わきの下)に転移有り。
ⅢA期 しこりが5cmの大きさを超え、同じ側の腋窩リンパ節(わきの下)に転移有り。
しこりの大きさに関係なく、同じ側の腋窩リンパ節(わきの下)のしこりが胸壁組織に癒着している、または胸骨傍リンパ節(鎖骨の横)にのみ転移有り。
ⅢB期 しこりの大きさに関係なく、同じ側の腋窩リンパ節(わきの下)のしこりが胸壁組織に癒着していたり、皮膚に浮腫や潰瘍を形成しているもの(炎症性乳がんを含む)。リンパ節への転移無し、同じ側の腋窩リンパ節(わきの下)に転移有り、胸骨傍リンパ節(鎖骨の横)にのみ転移有り。
ⅢC期 しこりの大きさに関係なく、同じ側の腋窩リンパ節(わきの下)あるいは、鎖骨上下のリンパ節に転移有り。また、胸骨傍リンパ節(鎖骨の横)と同じ側の腋窩リンパ節(わきの下)両方に転移有り。
Ⅳ期 しこりの大きさやリンパ節への転移状況にかかわらず、他の臓器への転移有り。

乳がんとそれ以外の疾患

乳房にしこりを認めても、80~90%は良性の腫瘍やその他の疾患で、乳がんである可能性は10~20%です。しかし、触診だけでは良性か悪性かの区別がつきにくいため、正確な診断のためには、画像検査や病理検査を行うことができる乳腺専門外来を受診する必要があります。

当院では、マンモグラフィ、超音波検査、細胞診、針生検など豊富な検査体制を整え、それを適切に評価する乳腺専門医がおりますので、何らかの異常を感じた場合は、お早めに当院までご相談ください。

乳腺線維腺腫

20~40代にできることが多い良性腫瘍が乳腺線維腺腫です。検診などの結果にも記載されることが多い疾患です。通常、2~3cm程度になると成長が止まりそれ以上大きくなることは稀です。マンモグラフィや超音波検査などの画像検査で線維腺腫を考える場合は、一般的には経過観察を行いますが、しこりが大きな場合は摘出をすることもあります。

葉状腫瘍

葉状腫瘍は、乳腺にできる腫瘍で35-55歳の女性に発症することが多いです。多くは良性や境界悪性(良性と悪性の間の性質のこと)ですが、稀に悪性のこともあります。線維腺腫よりも発症頻度は低いです。マンモグラフィ・超音波では、線維腺腫のかたちに似たしこりが認められます。良性であっても急速に増大する場合は、手術が必要になることもあります。

乳腺症

乳腺症とは良性疾患で、女性ホルモンの不均衡によりおきる乳腺のさまざまな変化の総称です。30-50代によくみられ、しこり、乳房の張り、痛み、乳頭分泌物などさまざま症状があります。画像検査では、乳がんと区別がつきにくい場合もあるため、診断をつけるために針生検を行うこともあります。乳腺症と診断がついた場合でも、乳腺症のなかに乳がんができることもあるため、定期的に検査をして経過をみます。

乳腺嚢胞
(にゅうせんのうほう)

乳腺嚢胞は、乳房のなかにある乳管という母乳の通り道がふくらんで内部に水がたまった袋のようなものです。健康診断などの結果で多く診断される所見のひとつですが、良性であり治療の必要はありません。小さいものは触れないことが多いですが、大きくなるとしこりとして触れることもあります。まれに嚢胞内に腫瘍ができることがあり(嚢胞内腫瘍)、その場合はその腫瘍が良性か悪性かを診断するために針生検をする場合もあります。

乳管内乳頭腫
(にゅうかんないにゅうとうしゅ)

乳管内にできる上皮性の良性腫瘍が乳管内乳頭腫です。症状は腫瘤、それから乳頭分泌物がきっかけで見つかることもあります。30~50歳代に多く、非浸潤性乳管癌との鑑別が難しい場合、画像検査の他に針生検を行うこともあります。

乳腺炎・乳腺膿瘍
(にゅうせんのうよう)

乳汁など乳腺からの分泌物が乳管で鬱滞することや、乳頭から細菌が侵入し、乳腺が炎症を起こしてしまうのが乳腺炎です。感染が悪化し膿が溜まってしまった状態が乳腺膿瘍で、抗菌剤による治療の他、切開して膿を出す処置が必要な場合もあります。

乳がんを発症リスクが高い人

  • 喫煙する
  • アルコールを良く飲む
  • 出産したことがない、または初産年齢が30歳以上
  • 授乳経験がない
  • 初潮が早く(11歳以下)、閉経が遅い(55歳以上)
  • 閉経後に体重が増えた
  • 乳がんになった血縁者がいる
  • 長期的なホルモン補充療法を行っている
  • 乳がんになったことがある

以上の項目に多く当てはまる方が必ずしも乳がんになるというわけではありません。しかし、統計結果によって上記に当てはまる方の乳がん発症リスクが高いことは確かです。チェック結果を参考にセルフチェックや乳がん検診を行い、早期発見のためにお役立てください。

マンモグラフィと
セルフチェックで早期発見

乳がんは、早期発見し早期治療することによって、その後の予後が良いことが知られています。早期発見のために大切なことは、しこりに触れないか、形にへこみやひきつれなどの変化はないかをご自身で確認するセルフチェックの習慣化とともに、何も症状がなくても定期的な乳がん検診を受けることです。
ご自身、そしてご家族との大切な時間を守るためにもセルフチェックを怠りなく、定期的な検診を積極的に受診してください。